北海道にセミが少ないのはなぜ?エゾハルゼミが明かす季節感のずれ

北海道の雪国びより

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結論からお伝えします。北海道にセミが少ないというのは、半分正解で、半分は誤解です。本州でおなじみのクマゼミやミンミンゼミ、ヒグラシといった種類は、北海道にはほとんど生息していません。一方で、エゾハルゼミやエゾゼミといった「北海道らしい」セミたちは、実はしっかりと存在しています。この記事では、北海道在住20年になる私が、なぜ夏の北海道が本州よりもずっと静かに感じるのか、その理由と実際の生態を、日々の暮らしの中での経験も交えながら詳しくお伝えします。

【この記事の要約】北海道の夏が静かに感じられる最大の理由は、セミの活動時期が本州とずれているからです。北海道のセミの主役であるエゾハルゼミは、初夏の5月から6月に鳴き、盛夏を迎える7月後半にはすでに姿を消しています。さらに、本州で夏の主役となるクマゼミやミンミンゼミ、ヒグラシは、北海道にはほとんど生息していません。この記事を最後まで読めば、北海道のセミ事情の全体像と、その背景にある生態の違いがしっかり理解できるはずです。

目次

北海道の夏は、本当に「セミの声がしない」のか

私は本州から北海道に移住して20年以上になります。もともと自然観察が趣味だったこともあり、季節ごとの生き物の変化には人一倍敏感なほうだと自覚しています。最初に迎えた夏、私はあることに気づきました。真夏の炎天下を歩いていても、あの本州特有の、うるさいくらいのセミの大合唱が聞こえてこないのです。

本州にいた頃は、夏になれば朝から晩までクマゼミやミンミンゼミが鳴き続け、正直うんざりすることさえありました。ところが、北海道の夏は、驚くほど静かです。この体感は、決して私だけの思い込みではありません。実際、道民の間でも「北海道はセミが少ない」という話は、よく聞く話題の一つです。

ただし、ここで一つ、大事な誤解を解いておきたいと思います。「北海道にセミがいない」わけではないのです。実際には北海道にもセミは生息しています。問題は「いる・いない」ではなく、「鳴く時期がずれている」ことにあります。

北海道のセミの主役は、初夏に鳴く「エゾハルゼミ」です

北海道で最も存在感のあるセミが、エゾハルゼミです。名前の通り、初夏を代表するセミで、5月初旬から6月にかけて鳴き始めます。本州でセミといえば真夏のイメージが強いと思いますが、北海道のエゾハルゼミは、まだ肌寒さの残る新緑の季節に、活発に鳴くのです。

私は初めてエゾハルゼミの声を聞いたとき、正直かなり驚きました。桜が終わって間もない、新緑がまぶしい時期に、セミの声が森の中に響き渡っていたからです。「北海道は6月からセミが鳴くのか」と、これまでの常識が覆されるような、季節感のずれに戸惑ったのを覚えています。

そして、ここが北海道のセミ事情で最も面白いポイントなのですが、このエゾハルゼミは、7月に入って本格的な夏が始まる頃には、すでに鳴き終えて姿を消してしまいます。つまり、本州で最もセミがうるさくなる真夏の時期に、北海道ではすでにセミの主役がひっそりと退場してしまっているのです。これが、「北海道の夏は静かだ」と多くの人が感じる、最大の理由だと私は考えています。

本州でおなじみのセミは、北海道にはほとんどいません

もう一つの大きな理由は、本州で夏の代表格とされるセミの多くが、北海道にはほとんど生息していないという事実です。

クマゼミ、ミンミンゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、ニイニイゼミといった、本州の夏を象徴するセミたちは、北海道の一部の温暖な地域を除いて、ほとんど見られません。私たちが一般的に「セミの声」としてイメージする、あの賑やかで力強い鳴き声の多くは、実はこれらの本州系のセミによるものです。北海道には、これらの本州の主役たちが、ほとんど不在なのです。

その代わりに北海道にいるのは、エゾハルゼミ、エゾゼミ、コエゾゼミ、アカエゾゼミといった、いかにも北海道らしい「エゾ」の名を冠したセミたちです。これらは本州にも生息していますが、どちらかというと森林性が強く、市街地の住宅街や公園ではあまり鳴き声を聞く機会がありません。人が多く暮らす市街地のエリアで耳にする機会が少ないぶん、余計に「セミが少ない」という印象につながっているのだと思います。

札幌市内では、実は10種類ものセミが確認されています

ここで意外な事実をお伝えします。札幌市の調査では、これまでに10種類ものセミが確認されています。ニイニイゼミ、アブラゼミ、コエゾゼミ、エゾゼミ、アカエゾゼミ、エゾハルゼミ、ヒグラシ、ミンミンゼミ、ツクツクボウシ、エゾチッチゼミです。

この数字を見ると、「意外と種類は多いじゃないか」と感じる方もいるかもしれません。実際、私もこの事実を初めて知ったときは、本当に驚きました。しかし、確認されている種類が多いことと、実際に日常生活の中で鳴き声をよく耳にすることは、必ずしも一致しないのです。多くの種類が森林性であるため、住宅街や庭先といった、私たちの生活圏では、なかなか出会う機会がないのです。

つまり北海道は、「種類そのものが少ない」のではなく、「身近な場所で出会いにくい」というのが、より正確な表現だと言えます。都市化が進み、緑地が限られている環境ほど、この傾向は強くなる印象があります。

なぜ北海道のセミは、このような独特な生態になったのか

ここで少し、科学的な背景にも触れておきます。北海道でセミの個体数や種類構成が本州と大きく異なる理由として、気温の低さが大きく関係していると考えられています。

セミの幼虫は、長い年月を土の中で過ごし、気温や土壌環境の影響を強く受けながら成長します。北海道の気温は本州より全体的に低く、夏の期間も短いため、成長サイクルの長いセミにとっては、生育の条件が厳しくなりやすいと考えられます。また、北海道はもともと針葉樹林が多く、クマゼミやミンミンゼミが好むような広葉樹主体の環境が、本州ほど広くないことも、生息数の差に影響していると言われています。

こうした気候・環境の違いが積み重なった結果、北海道では、寒冷な気候に適応した「エゾ」系のセミだけが独自に命脈を保ち、本州の主役級のセミたちは、ほとんど定着できなかったのだと私は理解しています。

本州と比較して分かる、季節感の違い

本州と北海道を比較すると、セミの「季節感」がまったく異なることがよく分かります。本州では、梅雨が明ける7月から8月にかけてが、セミの鳴き声のピークです。夏本番とセミの声は、切っても切れない関係にあります。

一方、北海道は真逆です。セミの鳴き声のピークは、梅雨がない北海道特有の初夏、5月から6月に訪れます。本州が本格的な夏を迎える頃、北海道のセミたちはすでに一仕事を終えているのです。この季節感のずれこそが、「北海道の夏は静かだ」という印象の正体だと、私は考えています。

本州から北海道に移住してきた方の多くが、この季節感のギャップに驚くようです。私自身、最初の年は「セミの声がしない夏なんて、こんなに静かなものなのか」と、新鮮な驚きを覚えました。

虫が苦手な方、静かな夏を求める方へ

ここからは、これから北海道への移住を考えている方に向けたお話です。夏の間、大量のセミの鳴き声が苦手だという方にとって、北海道は非常に快適な環境だと言えます。私自身、本州にいた頃は、朝から晩まで続くセミの鳴き声に、正直うんざりすることもありました。北海道に来てからは、そうしたストレスから解放されたことを、はっきりと実感しています。

ただし、初夏にはエゾハルゼミが元気に鳴くという点は、知っておいて損はありません。「北海道は一年中セミの声がしない」というわけではなく、時期がずれているだけだということを、正しく理解しておくことをおすすめします。

自由研究や自然観察にもおすすめの北海道のセミ

お子さんの夏休みの自由研究のテーマとして、北海道のセミはとても面白い題材になると私は思います。本州の教科書や図鑑には、クマゼミやミンミンゼミが当たり前のように登場しますが、北海道の子どもたちにとっては、実際に見聞きしたことがない種類ばかりです。逆に、エゾハルゼミやエゾゼミといった、道内ならではのセミを実際に観察し、鳴く時期や生息場所を調べてみることは、身近な自然への理解を深める、とても良い機会になるはずです。私の子どもも、学校の授業でエゾハルゼミの抜け殻を観察したことがあり、本州の図鑑との違いに、目を輝かせながら興味を持っていました。

【Know】セミの一生を知ると、北海道の特殊性がよく分かります

ここで少し、セミの生態そのものについて整理しておきます。セミは、卵から幼虫になり、数年間を土の中で過ごしたのち、地上に出て羽化し、成虫として短い期間を鳴いて過ごすという一生を送ります。この「土の中で過ごす期間」の長さと環境が、地域ごとの生態の違いを生み出す大きな要因になっています。

幼虫は土の中で木の根から養分を吸収しながら成長します。気温が低く、夏の期間が短い北海道では、幼虫が十分な養分を蓄えて成長するまでに、本州よりも長い年月がかかると考えられています。また、冬の厳しい寒さに耐えられる種類でなければ、そもそも北海道の土壌で生き延びること自体が難しくなります。エゾハルゼミやエゾゼミのように「エゾ」の名を持つ種類は、まさにこうした寒冷な環境に適応してきた、いわば北海道のスペシャリストなのです。

この仕組みを理解すると、「なぜ北海道にはクマゼミやミンミンゼミがいないのか」という疑問にも、納得のいく答えが見えてきます。単に「たまたまいない」のではなく、寒さへの耐性という、生き物としての根本的な条件をクリアできなかった結果なのです。

【Compare】道内でも地域差がある。都市部と自然豊かなエリアを比べてみます

北海道とひとくくりに言っても、地域によってセミの生息状況にはかなりの差があります。私が調べた範囲で、いくつかのエリアを比較してみたいと思います。

札幌など道央の都市部

都市化が進んでいる分、セミが好む森林環境が限られています。それでも、大通公園や円山公園といった緑地が豊富にあるため、エゾハルゼミの鳴き声は初夏になると意外なほどしっかり聞こえてきます。都市部でも、緑の多いエリアを選べば、セミとの出会いは十分に期待できます。

道南エリア(函館周辺)

本州に近く、道内では比較的温暖な気候のエリアです。この地理的な近さから、道内の中では本州系のセミが確認されやすい地域だとも言われています。ニイニイゼミやアブラゼミが観察されるケースも、道内の他エリアと比べると多いようです。

道北・道東の自然豊かなエリア

広大な森林が広がるエリアでは、エゾゼミやアカエゾゼミといった、大型で存在感のあるセミの声を、比較的よく耳にすることができます。人の生活圏と自然環境が近い分、都市部よりもセミとの距離が近いと感じることが多いかもしれません。

このように、同じ北海道でも、地域や環境によってセミとの「出会いやすさ」は大きく異なります。「北海道全体でセミが少ない」という一括りの理解ではなく、地域ごとの特性を知っておくと、より実感のわく理解につながると思います。

【Do】北海道でセミを観察してみたい方へのアドバイス

ここからは、実際に北海道でセミを観察してみたいという方に向けて、私なりの実践的なアドバイスをお伝えします。

エゾハルゼミを探すなら5月下旬から6月

北海道でセミの声を確実に聞きたいのであれば、5月下旬から6月にかけての、緑豊かな公園や森林公園に足を運ぶのが一番です。この時期であれば、まだ肌寒さの残る中でも、エゾハルゼミの独特な鳴き声をしっかり楽しむことができます。

抜け殻探しは夏休みの自由研究にぴったり

成虫の姿を見るタイミングを逃してしまっても、木の幹や葉の裏に残された抜け殻を探すという楽しみ方もあります。種類によって抜け殻の大きさや形が異なるため、図鑑と照らし合わせながら観察すると、立派な自由研究になります。私の子どもも、この方法で夏休みの宿題を楽しく仕上げていました。

公式の調査データを活用する

札幌市などの自治体では、市民参加型のセミ調査を実施していることがあります。こうした公式データを参考にすると、その年・その地域でどんな種類が確認されているかを、より正確に把握することができます。興味のある方は、お住まいの自治体の博物館や科学館の情報をチェックしてみることをおすすめします。

【Decide】移住や旅行の時期を考えるうえでの判断材料

最後に、北海道への移住や旅行の時期を考えている方に向けて、セミの生態を踏まえた判断材料をお伝えします。

「夏の静けさ」を求めて北海道への移住を検討している方であれば、本州のセミが最も賑やかになる7月後半から8月にかけての時期が、最も快適に感じられるはずです。この時期の北海道は、エゾハルゼミもすでに鳴き終え、本州のような大合唱もないため、驚くほど静かな夏を体験できます。実際に現地を訪れてこの静けさを体感してから、移住の最終判断をするという方法もおすすめです。

逆に、「北海道らしいセミの声を実際に聞いてみたい」という方は、あえて初夏の5月から6月に旅行のタイミングを合わせるとよいでしょう。この時期であれば、桜が終わったばかりの北海道の自然の中で、エゾハルゼミの独特な鳴き声を体験できます。目的に応じて時期を選ぶことで、北海道の自然をより深く楽しめると、私は思います。旅行会社に相談する際も、こうした季節ごとの自然の見どころを具体的に伝えると、より満足度の高いプランを提案してもらいやすくなるはずです。

私が実際に体験した、北海道のセミとの出会い

ここで、私自身の体験談を少しお話しします。北海道に来て数年が経ったある年の6月、近所の公園を散歩していたときのことです。突然、木々の間から「ミョーキン、ミョーキン」という、聞いたことのない独特な鳴き声が響いてきました。最初は何の音か分からず、少し驚いたのを覚えています。

後で調べてみると、それがエゾハルゼミの鳴き声だと分かりました。本州のセミの声とはまったく違う、透明感のある独特な響きに、私はすっかり魅了されてしまいました。それ以来、毎年6月になると、あの鳴き声を聞くのが密かな楽しみになっています。本州にいた頃は気づかなかった、季節ごとの生き物の変化に、北海道に来てからより敏感になったように思います。

逆に、真夏の炎天下に道を歩いていて、ふと「そういえば今年もセミの声を聞いていないな」と気づく瞬間もあります。本州であれば考えられない感覚ですが、これもまた北海道らしい夏の過ごし方なのだと、今では自然に受け止めています。

他の「北海道の生き物あるある」との共通点

セミの話をしていると、北海道には他にも「本州とは違う」と言われる生き物がいくつかあることに気づきます。代表的なのが、以前別の記事でも取り上げたゴキブリです。北海道の寒さゆえに数が少ないという点で、セミの事情と共通する部分があります。

また、マムシのような一部の毒蛇や、特定の外来種の分布も、北海道と本州とでは大きく異なります。こうした違いに共通しているのは、いずれも「気温」という、北海道特有の自然環境が、生き物の分布に大きな影響を与えているという点です。セミの話は、決して特殊な例外ではなく、北海道という土地の気候的な特徴を象徴する、分かりやすい事例のひとつだと私は捉えています。

気候変動による、今後の変化の可能性

近年、北海道でも夏の気温上昇が指摘されるようになってきました。もしこの傾向が今後も続いていくとすれば、北海道のセミ事情にも、少しずつ変化が生まれてくる可能性があります。

実際、道南エリアを中心に、これまであまり見られなかった本州系のセミが、少しずつ確認されるようになってきているという話も耳にします。私はこの点について、一人の道民として、今後も注意深く見守っていきたいと考えています。もし夏の高温期間が長くなっていけば、これまで北海道の気候では定着できなかった種類が、少しずつ北上してくる可能性もゼロではないと思うからです。

ただし、これはあくまで長期的な視点での話です。現時点で、北海道の夏が本州のように賑やかになる兆しは、まだそれほど大きくありません。当面は、エゾハルゼミを中心とした、北海道らしい静かな夏が続いていくと、私は見ています。

北海道の子どもたちにとっての「セミ」のイメージ

面白いことに、北海道で生まれ育った子どもたちの中には、「セミ=うるさいもの」というイメージをあまり持っていない子も多いようです。本州の子どもたちが、夏休みの定番の遊びとしてセミ取りに夢中になる一方、北海道の子どもたちにとっては、セミそのものが、それほど身近な存在ではないケースも少なくありません。

私の子どもも、夏休みに本州の親戚の家に遊びに行った際、大量のセミの鳴き声と、庭を飛び交う姿に驚いていました。「北海道ではこんなにセミがいないよね」と、素直な感想を口にしていたのが印象的でした。こうした体験を通じて、子どもたちなりに、地域による自然環境の違いを実感しているのだと思います。旅行や帰省のたびに、こうした発見があるのも、二つの地域を行き来する暮らしの楽しみの一つだと感じています。

seasonalな視点で見る、北海道の一年とセミの関係

最後に、季節ごとの北海道とセミの関係を整理しておきたいと思います。年間を通じて見ると、北海道の自然のリズムは、本州とはかなり異なることが分かります。

春(4月〜5月)

雪解けが進み、桜が咲く季節です。この時期はまだセミの活動は始まっておらず、静かな春を過ごすことになります。

初夏(5月下旬〜6月)

エゾハルゼミが活動のピークを迎える時期です。新緑の中に響く独特な鳴き声は、北海道の初夏を象徴する風物詩の一つだと、私は感じています。

盛夏(7月〜8月)

本州であればセミの大合唱がピークを迎える時期ですが、北海道ではエゾハルゼミがすでに姿を消し、比較的静かな時期に入ります。エゾゼミやコエゾゼミが森林部で鳴くこともありますが、都市部ではあまり聞こえてきません。

秋(9月〜)

セミの活動はほぼ終わりを迎えます。本州であれば、ツクツクボウシが秋の訪れを告げる時期ですが、北海道ではこの種類自体があまり見られないため、季節の変化を虫の声で感じる機会は限られています。

研究者・専門機関の視点から見た、北海道のセミの価値

私が調べていく中で興味深かったのは、北海道のセミが、単なる「珍しい生き物」以上の価値を持っているという点です。北海道は、本州のセミの生息域の「北限」にあたるエリアが多く、気候変動による生態系への影響を観察するうえで、貴重な指標になり得ると考えられています。

もし今後、道内で本州系のセミの目撃例が増えてくるようなことがあれば、それは気温上昇の影響を示す、分かりやすいサインの一つになるかもしれません。札幌市などが継続的にセミの調査を行っているのも、こうした環境変化を長期的に記録しておくという目的が背景にあるのだと、私は理解しています。身近な生き物の分布は、私たちの暮らす環境の変化を映し出す、小さくも確かな鏡のような存在なのだと感じます。

本州から北海道に来た方々の、リアルな反応

私の周りにも、進学や転勤で本州から北海道に移り住んできた友人・知人が何人もいます。彼らに夏の印象を聞くと、口をそろえて「思っていたよりずっと静かだった」と話してくれます。

ある友人は、最初の夏を過ごしたとき、「セミの声がしないから、なんだか物足りない気持ちになった」と、少し寂しそうに言っていました。本州で育った人にとって、夏とセミの声はセットになっている感覚が強いのだと思います。一方で、別の友人は「静かな夏が、こんなに快適だとは思わなかった」と、むしろ好意的に受け止めていました。感じ方は人それぞれですが、北海道の夏が本州とはまったく違う音風景を持っているということは、間違いない事実だと思います。こうした個人差も含めて、北海道での暮らしのリアルな一面として、私はとても興味深く感じています。

セミの声がもたらす、暮らしへの意外な影響

セミの鳴き声がない、あるいは少ないということは、実は暮らしのさまざまな場面に、静かな影響を与えています。私が特に実感しているのは、夏の睡眠環境の快適さです。本州にいた頃は、早朝からセミの声で目が覚めることが少なくありませんでした。北海道に来てからは、そうした音による目覚めがほとんどなくなり、朝の静けさをゆっくり楽しめるようになりました。窓を開けたまま眠れる涼しい夜と、この静けさが組み合わさることで、夏の睡眠の質そのものが大きく変わったように感じています。

また、屋外でのテレワークや、カフェのテラス席での作業といった、静かな環境を求める場面でも、セミの声に悩まされることが少ないのは、北海道ならではの隠れたメリットだと感じています。夏の北海道が「避暑地」として人気を集める理由の一つには、気温の低さだけでなく、こうした音環境の心地よさも、少なからず関係しているのではないかと、私は考えています。静けさそのものが、一つの観光資源になり得るというのは、実際に暮らしてみて初めて気づいた発見でした。

北海道の自然と共に生きる、ということ

この記事を通じて私が伝えたかったのは、単に「北海道にはセミが少ない」という事実だけではありません。北海道という土地が持つ、独自の気候と生態系のリズムを、正しく理解してほしいという思いがあります。

本州の常識をそのまま北海道に当てはめようとすると、「セミがいない」「静かすぎる」といった、表面的な違和感だけが残ってしまい、せっかくの北海道の自然を十分に楽しめなくなってしまいます。しかし、その背景にある理由を知ることで、北海道の自然が持つ独自の豊かさや面白さに、あらためて気づくことができるはずです。エゾハルゼミの声は、本州のセミとは違う、北海道だけの初夏の風物詩です。この記事が、そうした北海道らしい自然の魅力に、目を向けるきっかけになれば嬉しく思います。

エゾハルゼミの鳴き声を、実際にどう聞き分けるか

「エゾハルゼミの声を聞いてみたいけれど、他の鳥や虫の声と区別がつくか不安」という声を、私は周囲からよく聞きます。ここで、実際の聞き分け方について、私なりのコツをお伝えします。

エゾハルゼミの鳴き声は、「ミョーキンミョーキン」あるいは「ゲキゲキゲキ」といった、やや金属的で連続した響きが特徴です。本州のセミのような単調な「ジー」という音とは異なり、抑揚のあるリズムを刻むように鳴きます。初めて聞くと、鳥の声か、あるいは機械音のように感じる方も少なくないようです。私自身、最初にこの声を聞いたときは、しばらく音源を探して周囲を見渡してしまいました。

鳴く時間帯にも特徴があります。エゾハルゼミは、日中の気温が上がる時間帯に活発に鳴く傾向があり、早朝や夕方は比較的静かです。観察や録音を試みる場合は、天気の良い日の午後を狙うと、より確実に出会える可能性が高まります。

北海道以外の寒冷地域でも、似た傾向は見られるのか

北海道のセミ事情を調べていく中で、私は他の寒冷地域との比較にも興味を持つようになりました。東北地方の山間部や、標高の高い高原地帯でも、実は北海道と似たような傾向が見られることが分かっています。

例えば、東北地方の森林部では、ヒグラシやエゾゼミといった種類は見られるものの、平野部の都市に比べると、クマゼミやミンミンゼミの生息密度は低くなる傾向があります。標高が高くなるにつれて気温が下がることで、平地とは異なる生態系が形成されるのは、北海道の気候的な特殊性と、根本的には同じ理屈だと言えます。北海道は、こうした「寒冷地のセミ事情」を、広範囲かつ分かりやすい形で体現している、いわば代表的な事例なのだと、私は理解しています。

読者の皆さんに伝えたい、最後のメッセージ

ここまで、北海道のセミについて、私自身の体験や調べた内容を交えながらお伝えしてきました。最後に、あらためてお伝えしたいのは、「少ない」という言葉だけで片付けてしまうのは、少しもったいないということです。

北海道のセミは、本州とは異なる独自の進化を遂げ、寒さの厳しい環境の中で、たくましく命をつないできました。エゾハルゼミの鳴き声を聞くたびに、私は北海道という土地の自然の奥深さを、あらためて感じさせられます。この記事をきっかけに、北海道の初夏の森に、そっと耳を澄ませてみていただけたら、筆者としてこれ以上嬉しいことはありません。

よくある質問

Q. 北海道にセミは本当にいないのですか?

A. いないわけではありません。エゾハルゼミやエゾゼミなど、北海道特有の種類は生息しています。ただし、本州でおなじみのクマゼミやミンミンゼミは、ほとんど生息していません。私自身、この違いを知ったときは、北海道の自然の奥深さをあらためて実感しました。

Q. 北海道でセミの鳴き声が聞けるのはいつ頃ですか?

A. 主役のエゾハルゼミは5月から6月にかけて鳴きます。本州の夏本番である7月から8月には、すでに鳴き終えているため、この時期の北海道は比較的静かです。旅行や観察の計画を立てる際は、この時期のずれをぜひ意識してみてください。

Q. 札幌市内には何種類のセミがいますか?

A. 過去の調査では10種類が確認されています。ただし、多くが森林性のため、住宅街や公園で鳴き声を耳にする機会は限られています。緑の多い公園を選んで散策すると、出会える確率が高まります。

Q. 北海道の子どもの自由研究のテーマとして、セミは向いていますか?

A. とても向いていると思います。本州の図鑑に載っている種類と実際に見聞きできる種類が異なるため、比較しながら観察することで、地域による自然環境の違いを楽しく学べます。

Q. なぜ北海道はセミの種類や個体数が本州と違うのですか?

A. 気温の低さや、セミの幼虫が育つ土壌環境、針葉樹林が多い植生など、複数の要因が関係していると考えられています。幼虫が土の中で過ごす期間の生育条件が、本州よりも厳しいことも影響しています。

Q. エゾハルゼミの鳴き声は、他の虫や鳥と間違えやすいですか?

A. 初めて聞く方は、鳥の声や機械音と間違えることがあるようです。「ミョーキンミョーキン」といった、抑揚のある金属的な響きが特徴なので、慣れると聞き分けやすくなります。

Q. 今後、北海道でも本州系のセミが増える可能性はありますか?

A. 気候変動による気温上昇が続けば、可能性はゼロではないと考えられています。実際、道南エリアを中心に、これまであまり見られなかった種類が確認されるようになってきているという指摘もあります。

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まとめ

北海道にセミが少ないという話は、半分正解で半分は誤解です。エゾハルゼミやエゾゼミといった北海道特有のセミは、しっかりと生息しています。ただし、鳴く時期が本州とはずれており、本州が真夏を迎える頃には、北海道のセミはすでに活動を終えています。加えて、クマゼミやミンミンゼミといった本州の主役級のセミが、北海道にはほとんどいないことも、静けさの理由の一つです。

私自身、北海道に来て20年以上経った今でも、真夏の静けさには特別な心地よさを感じます。この記事が、北海道の夏の意外な一面を知るきっかけになれば嬉しく思います。

この記事を書くにあたって参考にした情報

この記事を執筆するにあたり、私は札幌市の博物館活動室が公表しているセミ調査の記録や、生物多様性センターが公開している分布データ、そして地域の自然観察に詳しい方々の記録を参考にしています。エゾハルゼミやエゾゼミといった種類の生態、鳴く時期、市街地での確認状況については、こうした公的な調査結果をもとに整理しました。あわせて、私自身が北海道で20年以上暮らしてきた中での体感や、周囲の道民・移住者から聞いた話も交えてお伝えしています。セミの分布や個体数は年によって変動することもあるため、より詳しい情報を知りたい方は、お住まいの地域の博物館や自然観察団体が発信する最新の調査結果もあわせてチェックしていただくことをおすすめします。

北海道の自然は、知れば知るほど奥が深いものです。セミという小さな生き物一つを取り上げても、そこには気候、地形、植生といった、この土地ならではの物語が詰まっています。これからも、北海道らしい自然の魅力を、皆さんと一緒に発見していけたらと思っています。

編集後記:北海道の夏を、もっと自由に楽しむために

最後に、少し個人的な感想を書かせてください。私は北海道に移住してきた当初、正直なところ「本州とは違う」というギャップに、戸惑うことが多くありました。セミの声がしない夏も、その一つでした。しかし、時間が経つにつれて、そのギャップこそが、この土地ならではのかけがえのない魅力なのだと気づくようになりました。

本州に「ないもの」を数えて嘆くのではなく、北海道に「あるもの」に、静かに目を向けてみる。エゾハルゼミの独特な鳴き声も、静かな真夏の朝も、北海道で暮らすからこそじっくり味わえる、かけがえのない体験です。これから北海道への移住や旅行を考えている方には、ぜひこうした視点を持って、この土地の自然をゆっくり楽しんでいただきたいと思います。

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この記事を書いた人

北海道で暮らして30年。1児の父親です。
北海道での生活や北海道の観光地など、北海道にかかわることを取り上げていきたいと思います。

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