この記事の要約
サロマ湖100kmウルトラマラソンは、北海道のオホーツク海沿岸を舞台に毎年6月に開催される、日本のウルトラマラソン界の「聖地」です。2026年は第41回大会が6月28日(日)に開催されました。湧別町をスタートし、サロマ湖畔を巡って北見市常呂町へ至る100kmのコースは日本陸連公認。制限時間は13時間、参加料は21,000円、定員3,600人の先着順エントリーです。
10回完走者に贈られる「サロマンブルー」の称号、100km世界記録が生まれた高速コース、そして最終盤に待つワッカ原生花園の絶景。この記事では、大会の全体像(Know)、エントリーから完走までの実践知識(Do)、フルマラソンや他のウルトラとの違い(Compare)、挑戦すべきかの判断材料(Decide)を、初挑戦を考えるランナー目線で解説します。
サロマ湖100kmウルトラマラソンとは?「聖地」と呼ばれる理由
結論から言います。日本でウルトラマラソンに挑むなら、サロマ湖は避けて通れない大会です。多くのランナーが「いつかはサロマ」を合言葉に、この地を目指します。
なぜ「聖地」なのか。理由は3つあります。
第一に、歴史と規模です。 1986年に始まったこの大会は、2026年で41回を数える国内最古参級の100kmレースです。定員3,600人という規模は、100km単独種目の大会として国内最大級。日本のウルトラマラソン文化は、サロマとともに育ってきたと言っても過言ではありません。
第二に、世界記録の舞台であることです。 サロマのコースは、100kmロードレースの世界最高記録が樹立されてきた高速コースとして知られています。2018年には風見尚選手が6時間09分14秒の世界記録をここで打ち立てました。獲得標高わずか200mほどのフラットなコースは、世界のトップから市民ランナーまで、すべての挑戦者に公平な舞台を提供します。
第三に、「サロマンブルー」という物語です。 この大会には、10回完走したランナーだけに贈られる称号があります。その名もサロマンブルー。称号を得たランナーの足形は、コース終盤のワッカ地区に陶板として飾られます。1年に1回しかチャンスのない大会で、10年をかけて到達する頂。この仕組みが、ランナーたちを毎年サロマへ呼び戻すのです。ちなみに20回完走者には「グランドブルー」というさらなる高みも用意されています。
私はこの大会を「日本のランニング文化が生んだ、最も美しい装置」だと考えています。速さを競う世界記録の舞台でありながら、13時間かけて完走する市民ランナーの10年物語も等しく讃える。この懐の深さこそ、サロマがサロマである理由です。
【Know】大会概要:2026年大会の基本データ
まず、第41回大会(2026年)の基本情報を整理します。
開催日:2026年6月28日(日)
スタート:午前5時00分、湧別総合体育館前(湧別町)
フィニッシュ:北見市常呂町(表彰式は百年広場)
種目:100kmの部、50kmの部
制限時間:100kmの部は13時間(フィニッシュ打切り18時00分)
参加料:100kmの部21,000円
定員:3,600人(100kmの部)
エントリー:先着順。2026年大会は1月26日20:00〜2月13日に一般受付
公認:日本陸上競技連盟公認コース。記録はマイラップスで計測
完走賞:完走者全員にメダル授与
いくつか補足します。
まず、スタートが午前5時という点。100kmを13時間で走るため、日の長い夏至前後の朝5時に出発し、夕方6時のフィニッシュ制限を目指す設計です。逆算すると、当日は午前2〜3時起床が標準になります。この「異常な早起き」自体が、サロマの洗礼の始まりです。
次に、エントリーの先着順という仕組み。人気大会のため、受付開始後の早い段階で定員が埋まる年もあります。また、サロマンブルー(10回完走者のうち直近3年連続完走などの条件を満たす方)と地元在住者には、一般受付前の先行エントリー枠が用意されています。10年通い続けたランナーへの優先権。ここにも大会の哲学が表れています。
そして2026年大会からの重要な変更点として、ナンバーカードなどの参加キットが全員に事前郵送(6月上旬)される方式になりました。従来必要だった湧別総合体育館での前日受付が不要になり、遠征の日程が組みやすくなっています。
コースの全体像:湖と海と原生花園の100km
コースは、サロマ湖の南岸から東岸をぐるりと巡る片道ルートです。ハイライトを順に追います。
スタート〜中盤:湧別町を出発し、サロマ湖畔へ。約33km地点からは車両規制のないオホーツク国道区間に入るため、走行には注意が必要です。42.195km地点には、サロマ湖の形をした「フルマラソン距離」のモニュメントが立っています。フルのゴール距離が、ここではまだ前半の通過点。記念写真を撮るランナーも多い名物ポイントです。
中盤〜終盤:湖越しにオホーツク海を望みながら、単調で長い戦いが続きます。55km地点にはレストステーションが設けられ、預けておいた荷物の受け取りと食事補給ができます。ここがレース全体の折り返しの拠点です。サロマ湖鶴雅リゾート前の私設エイドでは、例年お汁粉やそうめんが振る舞われ、多くのランナーの心の支えになっています。
クライマックス:ワッカ原生花園:残り約20km、80km付近から始まるワッカ原生花園が、この大会を象徴する区間です。一面の緑にオレンジ色のエゾスカシユリが咲き誇る絶景。しかし脚は限界。公式サイトが「最も苦しく、最も美しいポイント」と表現する通り、サロマの物語はここで完成します。ワッカを抜ければ、ゴールはもう目前です。
【Know】完走率と関門:13時間の現実を数字で知る
挑戦を考えるうえで、避けて通れないのが「完走できるのか」という問いです。数字で現実を直視しましょう。
完走率は年によって大きく変わる
サロマの完走率は、気象条件に大きく左右されます。2025年大会は気温が30℃を超える酷暑となり、完走率は58.4%まで落ち込みました。10人中4人以上が完走できなかった計算です。一方、涼しい年には完走率が大きく上がります。つまりサロマの完走は「走力×当日の気象」の掛け算で決まります。暑さへの備えは、走り込みと同じくらい重要な準備項目です。
関門は「イーブンペース設計」:1kmあたり約7分48秒
100kmの部には9箇所の関門があります。2026年大会の主な打切り時刻は次の通りです。10km地点6:23、20km地点7:39、30km地点8:55、41km地点10:20、50km地点11:30、60km地点12:48、69.3km地点14:02、79.3km地点15:19、91.5km地点16:54、そしてフィニッシュが18:00です。
注目すべきは、この関門設定の思想です。サロマの関門は、制限時間13時間をイーブンペース(1kmあたり約7分48秒)で走れば通過できるよう、ほぼ均等に置かれています。序盤だけ極端に厳しい関門があるタイプの大会とは違い、「一定ペースを守り続ける力」がそのまま問われる、シンプルで公平な設計です。
ただし公式サイトも注意を促している通り、中間の50km関門(6時間30分)をギリギリで通過すると、その後が苦しくなります。遅くとも30分から1時間の余裕を持って中間点を通過するのが、完走者たちの共通認識です。
【Do】エントリーから当日までの実践ガイド
ここからは実践編です。挑戦を決めた方が踏むべきステップを、時系列で解説します。
ステップ1:エントリーを勝ち取る
エントリーはインターネットのみで、先着順です。RUNNETの会員登録を事前に済ませ、受付開始日時(2026年大会は1月26日20:00開始でした)に確実にアクセスできるよう準備してください。例年1月下旬〜2月中旬が受付期間ですが、年により変わるため、公式サイトの発表を秋頃からチェックしておくと安心です。
なお、申し込み後の参加料は返金されず、種目の変更もできません。100kmか50kmか、自分の現在地と相談してから申し込みましょう。
ステップ2:宿と航空券を「即座に」確保する
サロマ遠征の最大の難関は、実はレースより宿かもしれません。会場周辺は宿泊施設の絶対数が少なく、大会前日・当日はすぐ満室になります。エントリーが確定したその日に、宿の予約まで済ませてください。
アクセスも計画が必要です。受付会場のある湧別町へは、女満別空港から車で約1時間40分、オホーツク紋別空港から約40分、旭川空港からは約3時間。いずれも飛行機の便数が限られるため、航空券も早めの確保が必須です。初参加の方には、航空券・宿・会場送迎がセットになった大会オフィシャルツアーの利用を公式も勧めています。個人手配の煩雑さを考えると、初回はツアーで「レースに集中できる環境」を買うのが賢明な判断です。
ステップ3:100kmに耐える体を作る
公式サイトは明言しています。「地道なトレーニングなくして100kmの時間内完走はありえません」。
土台となるのは、フルマラソンを余裕を持って完走できる走力と、長時間動き続けることへの耐性です。トレーニングの核心は、スピードよりも「時間」。週末に3〜5時間かけてゆっくり長く動く練習を積み重ね、内臓や脚を超長距離仕様に慣らしていきます。月間走行距離の目安は人によりますが、フル完走レベルから一段階引き上げた走り込みが必要と考えてください。
6月末の大会から逆算すると、冬から春が仕込みの期間です。北海道外のランナーなら、春のフルマラソンを練習の一環として組み込み、5月に最長走を済ませ、6月は疲労を抜く。この流れが定番です。
ステップ4:装備と補給の準備
100kmでは、フルマラソンの装備に加えて特有の準備が必要です。
補給:エイドは充実しており、20km以降は5kmごとに補給食も用意されます。それでも自前の補給ジェルや塩分タブレットは必携です。「お腹が空く前から食べる」のがウルトラの鉄則。空腹を感じてからでは手遅れです。
擦れ対策:13時間の摩擦は、フルの3倍以上です。ワセリンや専用クリームを、足指・脇・股など擦れる箇所すべてに塗り込みます。
荷物の仕分け:55kmのレストステーションに荷物を預けられます。替えのシューズや靴下、補給食の補充、雨具などを仕込んでおくと、後半戦の立て直しができます。
天候対応:6月末のオホーツクは、暑い年は30℃超、寒い年は雨と低温と、振れ幅が極端です。暑さ・寒さ・雨のすべてに対応できる準備をしてください。当サイトの北海道の月別気温・服装ガイドも参考になるはずです。
ステップ5:当日の過ごし方
スタートは午前5時。多くのランナーは午前2〜3時に起きて朝食をとります。宿によってはランナー向けの早朝食を用意してくれるところもあります。トイレは宿で済ませ、バスや車でスタート会場の湧別総合体育館へ。手荷物預かりは当日4:00から受付が始まります。
レース戦略の基本は、徹底したイーブンペースです。序盤の元気なうちに貯金を作りたくなりますが、100kmにおいて序盤の貯金は後半の借金になります。1kmあたり7分48秒の完走ラインに対し、自分の目標ペースを決めたら、前半はそれを1秒も上回らないくらいの自制心で走ってください。サロマの勝負は70km以降。ワッカに笑顔で入れるかどうかは、前半の我慢で決まります。
【Do】完走モデルプラン:関門より30分早く進む「12時間戦略」
関門ギリギリの走りは、精神的にも体力的にも消耗します。私が提案するのは、各関門を約30分〜1時間の余裕をもって通過する「12時間台完走プラン」です。
考え方はシンプルです。完走ラインが1kmあたり約7分48秒なら、走れるうちは7分00秒〜7分15秒前後で刻み、エイドや歩き休憩で使う時間をあらかじめ織り込んでおく。具体的には、前半50kmを5時間45分〜6時間で通過するイメージです。公式が推奨する「50km関門(6時間30分)に30分〜1時間の余裕」が、ちょうどこのゾーンに当たります。
後半は、失速を前提に計画します。60km以降はキロ8分台に落ちても、前半の貯金と歩きの活用で関門はクリアできます。大事なのは、貯金を「前半に飛ばして作る」のではなく、「エイド滞在と歩きを規律化して守る」ことです。エイドは1回3分以内、歩きは登り坂と補給時のみ、と自分ルールを決めておくと、時間が溶けるのを防げます。
なお、この数字はあくまでモデルです。自分のフルの持ちタイムから換算し、練習の長時間走で検証したうえで、自分だけのペース表を作ってください。ペース表を防水加工して腕に巻くのは、ウルトラランナーの定番の知恵です。
【Do】当日のタイムライン:午前2時起床からゴールまで
初挑戦者が不安になる「当日の流れ」を、時系列でシミュレーションしておきます。
午前2時〜3時、起床と朝食。おにぎりなど食べ慣れた炭水化物を、スタート2時間以上前に済ませます。宿でトイレを済ませ、ワセリンを塗り、装備を最終確認。午前4時前後、バスや車でスタート会場の湧別総合体育館へ移動します。手荷物預かりは4時から。55km地点行きの荷物と、ゴール行きの荷物を間違えないよう、前夜のうちに仕分けを終えておくのが鉄則です。
午前5時、号砲。まだ薄明るいオホーツクの朝を、抑えたペースで走り出します。太陽が上がるにつれ気温も上がるため、序盤の涼しさは「貯金を作る時間」ではなく「消耗を防ぐ時間」と捉えてください。
日中はエイドを規律正しく使いながら、淡々と距離を重ねます。55kmのレストステーションで荷物を受け取り、靴下交換や本格的な補給で後半戦に備えます。ここで座り込みすぎないことも大切です。長い休憩は、脚を固まらせます。
夕方、ワッカ原生花園へ。そして18時の制限時刻前、常呂のフィニッシュラインへ。ゴール地点では全選手の写真撮影があります。13時間の物語の最後の1枚、最高の表情で締めくくってください。
【Do】レース中のトラブル対処法:100kmは「問題解決」の連続
ウルトラマラソンの本質は、次々と起きるトラブルへの対処にあります。13時間の間に、体は必ず何かしらの悲鳴を上げます。代表的なトラブルと対処の考え方を、先に頭へ入れておきましょう。
胃腸トラブル:ウルトラ最大の敵
100kmで最も多いリタイア原因のひとつが、胃腸の不調です。長時間の振動と血流の変化で、胃が食べ物を受け付けなくなります。補給できなければエネルギーが尽き、レースは終わります。
対処の基本は「予防」です。序盤から少量ずつこまめに補給し、胃に一度に負担をかけないこと。固形物が受け付けなくなったらジェルへ、ジェルも無理ならスポーツドリンクや果物へと、段階的に切り替えます。練習の長時間走で「自分の胃が何なら受け付けるか」を必ず試しておいてください。本番でぶっつけの補給食は厳禁です。
脚の攣り:塩分と抑えたペースで予防する
攣りの主因は、筋疲労と電解質の喪失です。対処は、塩分タブレットの定期摂取と、序盤のオーバーペース禁止に尽きます。攣ってしまったら、慌てずに立ち止まってストレッチし、塩分と水分を入れて、歩きから再開します。100kmでは「歩くこと」は敗北ではありません。立て直しの技術です。
マメ・擦れ:小さな痛みが13時間で巨大化する
フルなら我慢できる小さな違和感も、100kmでは走行不能レベルに育ちます。事前のワセリン塗布と、履き慣れたシューズ・靴下が第一の防御です。それでもマメができたら、55kmのレストステーションが処置のチャンス。替えの靴下、絆創膏やテーピングを預け荷物に入れておきましょう。
心の失速:「もうやめたい」への備え
70km前後、多くのランナーに「なぜこんなことをしているのか」という問いが訪れます。これは異常ではなく、通過儀礼です。対処法として有効なのが、目標の分割です。「ゴールまであと30km」ではなく「次のエイドまであと3km」だけを考える。私設エイドのお汁粉を楽しみにする。ワッカの花畑を思い浮かべる。大きな目標は、小さな楽しみの連鎖に分解してこそ完遂できます。
【Do】年間トレーニング計画の実例:6月のサロマから逆算する
「具体的にどう練習すればいいのか」。フル完走経験者がサロマ100kmを目指す場合の、逆算プランの一例を示します。
秋〜冬(10月〜1月):土台づくり期。フルマラソンの練習と並行して、走行距離の底上げを図ります。この時期にフルのレースを1本走り、余裕度を確認しておくと、自分の現在地が分かります。1月下旬〜2月のエントリー合戦に備え、公式サイトの発表もチェックし始めます。
春(2月〜4月):距離拡張期。週末のロング走を段階的に伸ばします。3〜4時間の長時間走を月に数回。4月頃に春のフルマラソンを「全力ではなく余裕をもって」走り、長い距離への耐性を確かめるのも定番です。補給食やウェアのテストは、すべてこの期間の長時間走で済ませます。
初夏(5月):仕上げ期。最長走の月です。50〜60km級の距離走、または低強度で5〜6時間動き続ける練習を、5月中旬までに実施します。これが本番前最後の大仕事です。
直前(6月):回復期。距離を大幅に落とし、疲労を抜きます。ここで焦って走り込むのは逆効果です。睡眠、栄養、装備の最終確認に時間を使い、心と体を6月28日に照準します。
このプランの核心は「最長走は本番3〜4週間前まで」「本番で使うものはすべて練習で試す」の2点です。距離への不安から直前まで走り込みたくなりますが、疲労を持ち込んだ100kmに勝ち目はありません。
【Know】50kmの部という選択肢
100kmの陰に隠れがちですが、サロマには50kmの部があります。この選択肢の価値も整理しておきます。
50kmは、フルマラソンより約8km長いだけの距離です。フル完走者にとって、ウルトラの世界への現実的な第一歩になります。スタートやコース運営はサロマの本格的な大会環境そのものなので、エイドの使い方、超長距離のペース感覚、遠征の段取りといった「サロマのすべて」を、リスクを抑えて予行演習できます。
翌年に100kmへ挑む前提での参加は、実際に多くのランナーが採る王道ルートです。一方で、前述の通りワッカ原生花園は100kmコースの終盤に位置します。あの絶景を自分の脚で走る体験は、100km挑戦者だけの特権として取ってあります。
【Know】レース後の楽しみとオホーツクの魅力
サロマ遠征は、レースだけで終わらせるにはもったいない旅です。
まず、地元の食。サロマ湖といえばホタテの一大産地です。肉厚のホタテ、オホーツクの海の幸は、100kmを走り切った体への最高の報酬になります。走った直後は胃が弱っているので、当日夜は軽めに、翌日に本格的な「ご褒美会」を設定するのが賢い日程です。
次に、観光。北見・網走方面へ足を延ばせば、網走監獄や知床方面の大自然が待っています。せっかく飛行機を乗り継いで来たオホーツク。レース翌日を移動だけに使うのではなく、観光を1日挟んで帰る計画をおすすめします。疲労した体での長距離移動を避ける意味でも合理的です。
そして、大会の空気そのもの。サロマは地元の方々の応援が温かい大会として知られています。沿道の声援、私設エイドのもてなし、ゴールで待つ人々。この土地全体が40年かけて育ててきたホスピタリティは、都市型大会とは違う種類の感動を残してくれます。9月のオホーツク網走マラソンなど、道内の他大会と合わせて「オホーツクを走る旅」を年間で計画するのも一興です。詳しくは当サイトの北海道マラソン大会一覧の記事もご覧ください。
【Compare】フルマラソン・他のウルトラとの違い
「フルは走れるが、100kmは別世界なのか」。比較で整理します。
フルマラソンとの違い:距離2.4倍、時間は3倍
100kmはフルの約2.4倍の距離ですが、所要時間は3倍以上になるのが普通です。フル4時間のランナーでも、100kmは12〜13時間かかることが珍しくありません。走る強度を落とし、歩きと補給を織り交ぜながら「動き続ける」競技へと、質が変わるのです。
問われる能力も変わります。フルはスピード持久力の勝負ですが、ウルトラは補給技術、ペース管理、トラブル対処、そして精神力の総合格闘技です。「フルより遅いペースでいいなら楽そう」という予想は、13時間という時間の重みの前に崩れます。逆に言えば、スピードに自信がないランナーでも、緻密な準備と我慢強さで戦えるのがウルトラの魅力です。
他の100km大会との違い:フラットで公平、だから聖地
国内には他にも100kmレースがあります。山岳系のコースでは獲得標高が数千メートルに及ぶ大会もある中、サロマの獲得標高は約200mと際立ってフラットです。関門もイーブンペース設計でシンプル。つまりサロマは「100kmという距離そのもの」と純粋に向き合える大会です。
初めての100kmにサロマが選ばれ続けるのは、この公平さゆえです。コースの難所ではなく、距離と自分自身だけが相手。だからこそ、完走も記録も自分の実力として受け止められる。世界記録がここで生まれるのも、同じ理由です。
【Decide】あなたは挑戦すべきか?判断のポイント
最後に、挑戦の判断材料を整理します。
挑戦をおすすめできる人
フルマラソンを完走し、「次」を探しているランナー。距離の次元を変える挑戦として、サロマは最高の目標になります。
タイムの伸び悩みに疲れた人。ウルトラは自己ベスト更新とは別の価値観の世界です。完走そのものが物語になります。
コツコツ型の練習が得意な人。ウルトラの適性は、スピードの才能より継続力にあります。
旅として遠征を楽しめる人。オホーツクの大自然、地元の温かい応援、レース後のホタテや海の幸。サロマは旅としても一級品です。
待ったほうがいい人
フルマラソン未完走、または完走がやっとの人。まずフルで余裕を作ることが先決です。50kmの部から段階を踏む道もあります。
練習時間を確保できない時期にある人。週末の長時間練習なしに100kmは走れません。仕事や家庭の状況と相談してください。
故障を抱えている人。13時間の負荷は、小さな故障を確実に増幅させます。完治が先です。
迷っている人へ:50kmの部という入り口
サロマには50kmの部があります。100kmへの不安が大きいなら、まず50kmでサロマの空気とウルトラの距離感を体験する。翌年以降に100kmへ進む。この二段構えは、遠回りに見えて確実な道です。ワッカ原生花園は100kmのコース終盤にあるため、「ワッカを走りたければ100km」という点だけ、心に留めておいてください。
よくある質問
Q1. サロマ湖100kmウルトラマラソンはいつ開催されますか?
毎年6月下旬の日曜日に開催されます。2026年の第41回大会は6月28日(日)に行われました。スタートは午前5時、湧別町の湧別総合体育館前から北見市常呂町へ至る100kmコースです。
Q2. 制限時間と関門を教えてください。
100kmの部の制限時間は13時間です(午前5時スタート、18時打切り)。コース上に9箇所の関門があり、制限時間をイーブンペース(1kmあたり約7分48秒)で走れば通過できる設計です。中間の50km関門は6時間30分で、ここを30分〜1時間の余裕をもって通過するのが完走の目安とされます。
Q3. エントリーはいつ、どうやってするのですか?
インターネットのみの先着順受付です。2026年大会は1月26日20:00から2月13日まで一般エントリーが行われました。RUNNETの会員登録を事前に済ませておきましょう。サロマンブルー(10回完走者)と地元在住者には先行枠があります。参加料は100kmの部で21,000円、返金・種目変更はできません。
Q4. 完走率はどれくらいですか?
年の気象条件で大きく変動します。気温30℃を超えた2025年大会の完走率は58.4%でした。涼しい年には完走率は上がります。走力だけでなく、暑さ対策が完走を左右する大会です。
Q5. どれくらいの走力があれば完走できますか?
明確な基準はありませんが、フルマラソンを余裕をもって完走できる走力が土台とされます。完走ラインは1kmあたり約7分48秒を100km維持するペースです。週末の長時間走を含む計画的なトレーニングを、少なくとも半年単位で積むことが推奨されます。
Q6. サロマンブルーとは何ですか?
この大会を10回完走したランナーに贈られる称号です。称号を得たランナーの足形は、コース終盤のワッカ地区に陶板として飾られます。20回完走者には「グランドブルー」の称号もあります。年1回の大会で10年をかけて到達する目標として、多くのランナーの原動力になっています。
Q7. 遠方からのアクセスと宿泊はどうすればいいですか?
女満別空港から車で約1時間40分、オホーツク紋別空港から約40分です。周辺の宿は大会前後すぐに満室になるため、エントリー確定と同時の予約が鉄則です。初参加なら、航空券・宿・送迎がセットの大会オフィシャルツアーの利用がおすすめです。なお2026年から参加キットは事前郵送となり、前日受付は不要になりました。
まとめ:13時間の旅の先に、ワッカが待っている
最後に、この記事の要点を振り返ります。
サロマ湖100kmウルトラマラソンは、6月下旬にオホーツク沿岸で開催される、日本のウルトラの聖地です。制限時間13時間、イーブンペースなら1kmあたり約7分48秒。関門は公平に設計され、コースはフラット。問われるのは、地道な練習の積み重ねと、前半を我慢し抜く自制心です。
挑戦の手順は明確です。先着順エントリーを勝ち取り、その日のうちに宿を押さえ、半年かけて体を作り、当日はイーブンペースを守り抜く。そして80km過ぎ、限界の脚で踏み込むワッカ原生花園で、この大会が聖地と呼ばれる理由を全身で理解することになります。
フルマラソンの先にある世界を見たくなったら、サロマはいつでもそこにあります。10年後のサロマンブルーへの道は、最初の1回のエントリーから始まります。まずは公式サイトをブックマークして、次回大会のエントリー日程を確認することから始めてみてください。
※大会情報は執筆時点のものです。開催日程・エントリー・関門時刻などの最新情報は、必ず大会公式サイトでご確認ください。
